テレビ放送用の分配器は、電気の流れ方によって2つの種類に分かれます。
1端子しか電流が通らなくなっているごく一般的な分配器と、全部の端子で電流が通過するようになっている全端子電流通過型分配器です。
通常は全端子電流通過型分配器の方が価格が高く設定されているので、コストパフォーマンスとしては一般的な分配器がベスト。
できれば1端子電流通過型を使いたいところなんですが・・・。
電流通過が1端子だと困ってしまうようなケースって、結構あるんですかね?
両者の違いについて
まずは両者の違いについてしっかりと理解しておきましょう。
左が通常の2分配器で、右が全端子電流通過型の2分配器です。
図のように、通常の分配器は1つの出力端子からしか電流を送ることができませんが、全端子電流通過型分配器では、全ての出力端子から電流を送ることが可能です。
もちろん、4分配器や6分配器のように分配数が増えても全端子OKです。
電源が必要となるアンテナ機器は、BSアンテナや各種ブースター。
一般的には、屋外に設置してあるこのような機器に、屋内から電源を送る際に電流通過端子の問題が発生します。
電流が分配器でストップして屋外に送れないと、機器が作動しないのでテレビが受信できませんからね。
集合住宅は通常タイプでOK
アパートやマンションなどの集合住宅での使用は、ほぼ通常の1端子電流通過型分配器で問題ないでしょう。
集合住宅の場合、ブースターなどは共用部のテレビ盤などに設置されているケースがほとんどで、テレビ盤には100V電源を持ってくるのが基本です。
ブースター自体はその場で電源を取れるためわざわざ屋内から送ってあげる必要がありませんし、BSアンテナが設置してある場合でもブースター自体に電源を送る機能が搭載されているので、設置したブースターからBSアンテナに電源を送ってあげればOK。
いずれも分配器を経由する前の段階で発生する問題なので、分配器がどちらでも関係ないんですね。
新築住宅も通常タイプで問題なし
一般住宅でも、新築であれば殆ど通常の1端子電流通過型分配器で問題ないと思います。
最近の新築住宅は、テレビコンセントの数が4箇所から6箇所程度あるため、ブースターの設置が標準仕様になってきています。
特にBSデジタル放送も同時受信する場合は、電源の送電のことも考えてブースターの設置率がより高くなってますね。
更に、インターネット関連の通信機器とアンテナ機器などを収納するマルチメディアボックス(情報通信機器収納盤)なども普及し始めており、そこには電源が標準で付いています。
集合住宅同様に、分配器を経由して電源を送る必要性が少ないですね。
よって、分配器は電流通過にこだわらず、安いもので問題ないでしょう。
既設改修に注意
それ以外のケース、特に既設住宅の改修時には注意が必要です。
昔の住宅はテレビを見る箇所が少なく、ブースターを設置していないケースがままあります。
また、テレビコンセントを増設したり、BSアンテナを追加設置するなどの増改築をしている家屋も多く、テレビの系統も複雑になっている場合があります。
安易に分配器を取り換えてしまうと、これまで電源を送っていたものが途切れてしまって受信が出来なくなってしまうことも・・・。
十分にテレビ系統を理解したうえで交換するのであれば問題ないですが、系統を把握する手間自体が大変な作業になったりしますので、全端子電流通過型分配器にあっさりと変えてしまうのも良策かと思いますね。
屋外型は全端子電流通過型が多い
特に屋外型の分配器は、全端子電流通過型を使用する頻度が高いように思います。
増改築時にテレビを見る箇所を増やしたり、既設の母屋から新築の離れにアンテナ線を分配したり。
単なる新築住宅ではなく少し特殊な場面に良く使用されますので、必然的に電流を経由するケースが増加するんですよね。
特に、一つのアンテナを共同アンテナにして複数の世帯でテレビを視聴したりする場合は、電源供給を担っている家屋の電源が何らかの要因で停まってしまった時、それ以外の家屋のテレビも同時に受信が出来なくなってしまいます。
常にどこからでも電源を供給できるようにしておけば、そのような問題は起こらないでしょう。
まとめ
全端子電流通過型分配器は、電流の通過端子のことを考える必要がないため楽ですが、その分価格がちょっと高めです。
しっかりとテレビ系統を把握したうえで使用するのであれば、ほとんどの場合は1端子電流通過型分配器で設備的には賄えますので、コストを考えるのであれば通常タイプをおススメします。
逆に、系統の把握にかかる時間を惜しむのであれば、全端子電流通過型がベストでしょう。
使用する建物の種類や、新築か改修かによっても変わってきますので、状況に応じて変えてみてもいいですね。