マンションやアパートのように、複数の入居者が1本のアンテナでテレビを受信する場合、そのアンテナは共同アンテナという言い方ができますが、今回ご説明するのはもっと大きな施設の話。
1つのアンテナで複数の住戸をカバーするような受信施設のことを、共同受信施設(共聴施設)という言い方をします。
見晴らしのいい高台などにアンテナを建てて、そこから出た線を電柱伝いに各家屋に送っていくような設備。
言ってみれば、小型のケーブルテレビ施設のようなものですね。
そんな共同受信施設にもいくつか種類がありますので、それぞれ説明していきたいと思います。
難視聴地域への共同受信施設
もともとテレビの受信環境が非常に悪い山間部などの難視聴地域に対し、良好な電波を供給するべく設置されている共同受信施設です。
受信する電波の強さによって強電界、中電界、弱電界なんて言い方をしますが、難視聴地域はいわゆる「弱電界」地域に当たります。
受信料を徴収している手前、全国に良好な電波を届ける義務があるNHKが主となって作っている施設は、NHK共聴と呼ばれています。
対して、弱電界地域に住む住民達が、何とかキレイにテレビが観れないものかと工夫して設置したものが、自主共聴と呼ばれる施設です。
いずれも良好な電波が受信できる位置にアンテナを設置して、そこから電柱などを伝いながら各住居に電波を供給する仕組みになっています。
これらの施設は地上波がアナログ放送の時代に作られたものが殆どで、2011年に地上波がデジタル化されたことによって受信環境が大幅に改善したため、多くの施設は役目を終えて撤去されました。
しかしながら、撤去にもかなりの費用が必要となることから自主共聴を中心にまだまだこのような施設が残っているのが現状です。
また、デジタル化されたにも関わらず、どうしても受信が出来ない地域もあります。
そういった地域に対し、最近では無線を使ったギャップフィラーシステムと呼ばれる新たな共同受信施設も登場してますね。
電波障害対策による共同受信施設
難視聴地域の対策施設よりも、建物の電波障害による共同受信施設の方が全国的に多く残っているでしょう。
大きな建造物が建つことによって発生する、遮蔽障害(建物の陰になって電波が遮られる障害)や反射障害(建物にぶつかって電波が反射する障害)への対策で設置された共同受信施設です。
電波障害の原因となる建物の屋上や、その敷地内に共同アンテナを設置し、直接もしくは電柱などを伝って各障害家屋に電波を届ける仕組みです。
学校などの公共施設の建築によって発生する電波障害の場合は各自治体が管理していますが、残っているそのほとんどが民間の建物による施設でしょう。
こちらもデジタル化によって不必要となっているものが数多くありますが、住民との折衝や撤去費用の負担など、様々な要因から撤去されずに残っている施設が相当あると思われます。
地上デジタル放送に切り替わっても特に問題なく受信できている場合、必ずしも撤去する必要はないですからね。
現在このような共同受信施設に加入している方は、場合によって自宅の屋根などにアンテナを設置すれば問題なく受信できるかもしれませんね。
個別受信に切り替える
これらの共同受信施設は、対象の家屋が個別にアンテナを建てたり、ケーブルテレビに切り替えたりして、デジタル化によって多くの物が撤去されました。
国の補助もあってある程度は撤去が進みましたが、対象となる住民に費用負担を強いるのも難しく、まだまだ手付かずの施設が数多く残っているのが現状です。
老朽化も進んでいきますし、使用している機器もどんどん廃盤になって交換が利かなくなってきていますので、将来的にちょっと心配ではありますね。
NHK共聴や自治体が管理している施設はなんとかしてくれると思いますけど、民間が管理している施設はどこまで責任もって対応してもらえるのか。。。
いっそのこと、共同受信を止めて個別受信(自分たちの家にアンテナを建てて受信する)に切り替えるのも手だと思いますよ。
基本的にはアナログ放送よりもデジタル放送の方が受信範囲は広くなると考えていいです。
ですから、アナログ放送時代にどうしても上手く映らなくて共同アンテナ受信を余儀なくいされていたんだとしても、今なら自分の家の屋根にアンテナを建てることで受信できる可能性は十分にあります。
家を建て替えたり、外壁の改修などでこの際アンテナも改修したいと考えている方は、一度共同受信から抜けることも検討してみたらどうでしょう。
電気工事店さんに詳しく事情を話して、相談に乗ってもらうのが理想ですね。