アンテナの工事に携っている方にとって、テレビ電波のレベルの落ち方についての知識は身に着けておいて損はないでしょう。
特にテレビ設備の設計をされている方は、レベル計算の方法を知っているのとそうでないのとで、図面の精度が大きく変わってきます。
特に最近では4K8K衛星放送が入ってきたので大変です。
地上デジタル放送はもちろんのこと、通常のBSやCSデジタル放送と比べてもレベルの落ち方が非常に大きく、いざ引き渡した後に「4K放送が映らない」なんてクレームが入ることも。。。
より信頼性の高い図面を作成するためにも、テレビ電波のレベル計算方法を基本だけでも身につけておきましょう。
まずはレベル計算を行うにあたっての基礎をご説明していきます。
どの程度レベルがあればOKかを知る
まずは、一番レベルが落ちると思われる位置のテレビ端子(最終端末)において、どの程度レベルが保てれば受信に問題がないかを知る必要があります。
こちらの表は、各アンテナメーカーなどが参加しているJEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)が明示している受信レベルの目安です。
項目 | 望ましいテレビ受信機の入力条件 | |
地上デジタル放送 | レベル | 46dBμV~89dBμV |
C/N値 | 25dB以上 | |
BER | 2×10-4以下 | |
衛星放送 | レベル | 50dBμV~81dBμV |
C/N値 | 17dB以上 | |
BER | 2×10-4以下 |
C/N値やBERは映像の品質に関する数値で、一定の質を有する場合を一つの条件として、地上デジタル放送では46dBμV、衛星放送では50dBμV以上のレベルが、テレビへの望ましい入力レベルということになります。
C/N値やBERなど、各単位の意味が分からない方は先にそれを知っておいた方がいいと思います。
別途記事を書いていますので、事前に把握しておきましょう。
↓こちらです↓
表にある数字はあくまでテレビへの入力条件ですから、テレビコンセントからケーブルなどを伝って更にレベルが落ちることを想定して、最終端末でのレベルを少し高めに設定します。
おおよそですが、地上デジタル放送で50dBμV、衛星放送で55dBμV程度のレベルが確保できれば、質に問題がなければ映るという判断でいいでしょう。
ただし、設計の依頼元やケーブルテレビ局などから、最終端末について「〇〇dBμVを維持」などという指示がある場合は、そちらに合わせた設計が必要です。
レベル計算する放送の種類を決める
レベルの下限がわかったら、次は計算をする放送の種類を決める必要があります。
テレビ電波は、周波数が高ければ高いほどレベルの落ち方が激しくなります。
したがって、周波数が低い地上デジタル放送と高い衛星放送では、衛星放送の方がレベルが落ちやすいということになります。
同じ機器を通っていても、放送によって最終端末レベルは変わってくるということです。
そもそもBSアンテナを設置しない設備であれば、地上デジタル放送の最も高い周波数(710MHz)を、BSアンテナを設置する場合は4K8K衛星放送の最も高い周波数(3224MHz)を計算しましょう。
一番高い周波数のレベルで問題ない数値が確保できれば、それより低い周波数は必然的に受信ができるということになります。
アンテナ機器はもう4K8K対応品がほとんどになってきましたので、衛星放送の計算も4K8K対応で考えた方が無難でしょう。
どこを基準に減らしていくのか
もう一つ計算をする前に決めておきたいのが、どこを基準としてレベルを引いていくのかということです。
テレビ電波の落ち方の計算ですから、ゼロから足していくのではなく、もともとあるレベルから機器を通過するごとにレベルを減らしていきます。
本来ならアンテナでの受信レベルから計算していくべきですが、設計段階ではどの程度のレベルがアンテナで受信できるかわかりません。
受信する地域が強電界なのか弱電界なのか、設置するアンテナの種類や位置はどこなのか。
設計段階ではなかなかわからないですよね。
ですから、レベル計算を行う際は、ブースターの定格出力の値を基準として考えるのが基本となります。
ブースターの定格出力の意味が分からない方は、事前に別途記事を参照ください。
↓こちらです↓
定格出力はブースターによって異なりますので、とりあえず利得(増幅できるレベル)が30dB型のブースターを基準とするなどして計算を行い、最終的なブースターのグレードを決めていけば良いと思います。
定格出力の値は、各メーカーのカタログやブースター本体に記載されています。
ちなみにこのブースターの定格出力は、地上デジタル放送で約95dBμV、110度CSデジタル放送で100dBμVですね。
地上デジタル放送を計算する場合は、この95dBμVからどんどん減算していくということになります。
まとめ
レベル計算を行う前段階として、上記3点は抑えておく必要があります。
逆を言うと、この3点を理解していれば後は算数と変わりませんので、数値さえ確認できれば問題ないということです。
設計だけではなく、テレビの映りが悪いなどのアフターメンテナンスにおいて原因究明を行う際に、レベルの落ち方の基本を知っていると気づきが早くなります。
アンテナ工事に携る方は覚えておくと良いでしょう。
実際の詳しい計算は実践編の記事を投稿しています。
基本編を理解したかたは実践編に移りましょう。
↓こちらです↓
コメント
分配器と分岐器の地上デジタル放送と衛星放送の周波数毎の減衰デシベル一覧表はありませんか。
接続型の減衰デシベルも。壁のコンセントたいぷなど。
ラインブースターというのが有るようですが、こちらのメリットとデメリットを教えて下さい。
分配器と分岐器の地上デジタル放送と衛星放送の周波数毎の減衰デシベル一覧表はありませんか。
接続型の減衰デシベルも。壁のコンセントたいぷなど。
ラインブースターというのが有るようですが、こちらのメリットとデメリットを教えて下さい。
管理人のHAGURUMAです。
各製品の減衰表につきましては、メーカーによって多少性能差があるため、それぞれのメーカーホームページなどを参考にしてください。
筒型のラインブースターのことですかね。
ラインブースターのメリットは、まず価格が安いこと。物にもよりますが、基本的に通常のブースターより安価です。デメリットは性能が劣ること。増幅するレベルも15dBから20dB程度のものが多く、調整機能もほとんどありません。
設備全体というよりは、局所的なレベル改善に使うケースが多いでしょう。