テレビのブースターには様々なスイッチ類が付いています。
一定のレベルを減衰させるアッテネーターや、増幅するレベルを調整するゲインコントロールと呼ばれるもの。
この辺りは比較的頻繁に使用するスイッチなので、用途を理解されている方が多いでしょう。
ただ、高価なブースターになるともう一つ「TILT(チルト)」と呼ばれるスイッチが付いている場合があります。
このチルトスイッチの意味って知ってますでしょうか。
今回は、このチルトの役割について説明をしていきます。
レベルを均等にする
エレコム(DXアンテナ) CW40M CS/BS-IF・CATVブースター
上記はCATVとBS・CSのブースターですが、CATV上りと下り、BS・CSのそれぞれの項目に「TILT(チルト)」のスイッチが付いているのがわかります。
このブースターには、スイッチになっているものとツマミになっているものの2種類が付いていますが、どちらも役割は同じです。
チルトとは、簡単に言うとチャンネル毎のレベル差をなくして均等にするもの。
テレビの電波は、周波数の帯域が高ければ高いほど、レベルの落ち方が激しくなります。
地上デジタル放送で考えた場合、一番低いチャンネルのUHF13ch(473MHz)と一番高いチャンネルのUHF52ch(707MHz)では、52chの方がレベルが落ちやすいということです。
ブースターには定格出力というものがあって、この値を超えると映像にノイズが入るなどの障害が発生します。
52chは定格出力レベルの範囲内なのに、13chは定格出力を超えてしまうなんてことは割と頻繁にあること。
その場合、地上デジタル放送全体のレベルをアッテネーターやゲインコントロールで下げてあげればOKですが、13chと52chでレベル差が激しすぎると、52chのレベルが下がり過ぎてしまうことも。
そんな時にこのチルトを使用して13chと52chのレベル差を均等にしてあげると、どちらも同じようなレベルで出力するが可能になります。
かなり高度なレベル調整機能と言えますね。
低い周波数のレベルを下げる
では、このチルトは具体的にどのような仕組みになっているのでしょうか。
チルトを使用する場合、一般的には低い周波数のレベルを下げるようにします。
同軸ケーブルや分配器などの様々なアンテナ機器を通過することでテレビの電波はどんどん弱くなっていきますが、上述したように周波数の低いチャンネルの方が高いチャンネルよりも下げ幅が大きくなります。
レベルを上げるのは大変なので、低い方のチャンネルのテレビレベルを下げることで、高い方と均等にしてあげるんですね。
チルトの形状はブースターによって様々ですが、スイッチ一つで数dB落とすものや、ツマミで調整するものもあります。
いずれにしても細かなレベル調整になりますので、レベルチェッカーや電界強度測定器などでレベルをチェックしながら均等にしていきましょう。
適当にパチパチやっても良くなることはありますが、余計に悪くなる場合もありますので注意が必要です。
ケーブルテレビや大型施設で
高い周波数の方がレベルが落ちやすいといっても、そんなに簡単に差が生まれる訳ではありません。
一般の戸建住宅程度のテレビ設備では、ほぼ気にする必要はありません。
何十キロも電柱伝いにケーブルを這わせているケーブルテレビや、ブースターを何台も繋げて伝送する大型の施設などで使用する機能だと思っていいでしょう。
ですから、一般家庭用のブースターには、基本的にチルトスイッチは付いていませんでした。
ただ、新4K8K衛星放送が始まったことで受信チャンネルが増えることから、4K8K対応の新商品にはチルトスイッチが搭載されたものが出始めています。
4K/8K放送対応用 UHF・BS・CSブースター 35dB型 UBCBW35
今後は家庭用ブースターでもチルトスイッチ付きがスタンダードとなるかもしれませんね。
まとめ
チャンネルが増えれば、その分周波数が必要になります。
新しく始まった新4K8K衛星放送は、周波数帯域が3224MHzまで広がっています。
地上デジタル放送の一番低いチャンネルが473MHzですから、レベルの落ち方も随分と違うんですよね。
レベルを均等にするチルト機能も、今まで以上に重要になるかもしれません。
簡単な知識だけでも持っていると、いざという時に役に立つかもしれませんよ。